羽毛の環境優良性についてのレポートを翻訳しました。
国際羽毛協会(The International Down and Feather Bureau)による「ENVIRONMENTAL FOOTPRINT OF DOWN VS. POLYESTER FILL MATERIAL 」を翻訳しました。羽毛が環境への負荷の少ない素材だと結論づけるレポートです。
逐語訳を心がけておりますが一部補完しております。翻訳に誤りがありましたら、恐れ入りますがinfo[at]takao.coまでご連絡いただけましたら幸甚です。
Contents
羽毛およびポリエステル充填物の環境負荷に関して
羽毛充填物の環境に対する影響の理解およびライフサイクルアセスメントを通した天然羽毛とポリエステル素材の比較に関して
概要
ライフサイクルアセスメント( life cycle assessment : 以下LCA)は製品およびサービスが経年で環境に及ぼす影響を評価する有力な手法である。改善のためにどこに改善の余地があるのか、ある素材や製品と他種と比べどうか、トレードオフとなる点はどこか、LCAはそのような多くの課題に答えうる。国際的な羽毛の交易に関しての機関である国際羽毛協会(The International Down and Feather Bureau : 以下IDFB)は環境影響・機会を軽減するため、事態把握するとともに羽毛充填物とポリエステル充填物の比較を行うためにライフサイクルアセスメントを行った。
本調査により分析した影響分野において、羽毛充填物はポリエステル充填物に比べ、明らかに環境に優良と判明した。
試み
ダウンおよびフェザーは食肉用鶏産業の副産物である。2009年から2013年にかけ、年間に27億羽のアヒルと6億5300万羽のガチョウが食用として飼育され、186000トンのダウンおよびフェザーが生産、取引されている。食肉用アヒルのうち、約4分の3が中国で飼育されている。結果、中国は衣料品・寝具向けのダウンおよびフェザーの最大の供給国である。
予期しない速度で生じる天然資源の枯渇や高まる環境悪化により、組織や消費者は製品の環境負荷を基準として商品選択を行なっている。ダウンは天然素材であり、再利用可能な素材ではあるものの、果たしてポリエステルよりも環境負荷が少ないと言えるのだろうか。
アプローチ
調査を通し、一貫して科学的手法で解明すべく、IDFBはロングトレイルサステイナビリティ(Long Trail Sustainability:以下LTS )にライフサイクルアセスメントを委託した。
LCAは素材やエネルギー投入量を計測するとともに、製品寿命のスパンでの製品の廃棄物や排気量の計測、複数の環境影響カテゴリー(気候変動、生態系など)を評価した。
なぜなら充填物は衣料品(ジャケットなど)や家財道具(寝具など)そしてアウトドア用品(寝袋など)といったあらゆる製品に使用されている。本調査ではゆりかごからゲートまで、使用される原料の様々から製造段階が含まれており、上述した例のような製品応用した際の使用や、製品の廃棄は含まれていない。
公正な比較を行うため、複数の機能特性および耐久年数が必要とされた。充填物間の固有の違いによるファンクショナルユニット(functional unit : LCAの比較の基本を意味する用語)を取り入れるからだ。
※異なるサンプル間において、一定の機能を果たす上で必要となるそれぞれの単位のこと。
後述のファンクショナルユニットが本調査に使用された。充填物は5年の寿命を想定し、CLO数値が4.06のもの(衣料品業界において使用される着衣の熱抵抗のこと)
羽毛:700フィルパワーで1m四方あたり108グラムのもの(※ダウンパワーでいうと380DPほど)
ポリエステル:1m四方あたり230gのポリエステル
LTSの指揮のもと、調査のため参加IDFBメンバーがエネルギー、水および素材の投入量や羽毛充填物製造過程における廃棄物の量といった一次データを収集、提供した。IDFBの業務外のプロセスにおいては一次データが使用できないため、二次データや計測値が使用された。ポリエステル充填物については二次データが使用された。LTSはSimaPro LCA sohutoweareを用い、2つの異なる充填物のモデル化、分析をおこなった。
結果
結果は図1が示す通り、羽毛充填物が85〜97%ほど環境に及ぼす影響が少ないことがわかった。
ポリエステル充填物はダウンに比べ、18倍も気候変動影響が高いことがわかる。
単位重量基準での評価(性能や耐久年数は考慮していない)でさえ、羽毛はポリエステルに比べて分析した全ての影響カテゴリーにおいて低い影響となっている。
水の利用を除いた全ての影響カテゴリーにおいて、比較結果は高い確証性と統計学的に有意であると考えられる。ダウンおよびポリエステルで使用されたバックグラウンドデータセットにおいて水の使用カテゴリーにおいて高い変動があり、それが不確証性を産んだ。 水の使用カテゴリーにおいて統計学的に有意な結論が導けなかったため、分析結果から外すこととした。水質保全および再利用は羽毛を使用した製品の主要な方面で、最大の生産国である中国や他のIDFB参加メンバーの施設にてすでに実施されている。
羽毛充填物の環境影響のおおよそはアヒルやガチョウの飼育施設でのエネルギー使用によるものだ。
洗剤も生態系カテゴリーに大きく影響を及ぼしている。
本調査の結果から見えた改善点は以下の通りである。
・エネルギー使用の削減の方法を検討すること
・羽毛充填物の生産過程においての廃棄物を減らすこと
・再生利用可能エネルギーを使用すること
・ネガティブな生態系への影響を減らすため、環境に優良な洗剤の研究および活用すること
商業的価値
LTSにより、IDFBは「羽毛は代替物に対してサステイナブルなのか」という問いに科学的手法で答え、外部コミュニケーションおよびマーケティングを行うことができた。それと同時に、ISO規約を通した改善点を見出した。
産業および消費者は地球に及ぼす集合的な影響を減らすことにやっきとなっている今や、彼らの情報に基づいた決定に大きく寄与する。
原文: ENVIRONMENTAL FOOTPRINT OF DOWN VS. POLYESTER FILL MATERIAL published by International Down and Feather Bureau
https://idfb.net/index.php?eID=dumpFile&t=f&f=1333&token=5ddcc6725dc36ad2028128ef69b64655e444c182
翻訳:ふとんのタカオ 髙尾顕矢
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